ホームページを運営していると、ときどき相互リンクの営業メールが届きます。
「営業ではありません」という顔をして届くこともありますが、こちらから見れば普通に営業です。
もちろん、営業活動そのものを否定するつもりはありません。こちらも事業者ですし、営業しなければ仕事は生まれません。ただ、毎回気になることがあります。
業者さん、今はAIの時代です。
「貴サイトの丁寧な情報発信は、読者に有益なコンテンツが多く……」という文面で、まだ押し切れると思っているのでしょうか。
よく届く相互リンク営業メール
まず、よく届く相互リンク営業メールの例を見てみます。
以下は、実際に届く相互リンク営業メールの雰囲気を残しつつ、会社名・担当者名・URL・メールアドレス・管理番号などを匿名化したサンプルです。
株式会社AでWeb担当をしております、山田と申します。
貴サイトの丁寧な情報発信は、読者に有益なコンテンツが多く、いつも参考にさせていただいております。
ぜひ弊サイトと貴サイトとの間で、相互リンクによる連携をご検討いただけませんでしょうか。
両サイトの価値向上や、より多くの方への情報提供に繋がると考えております。もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひメールにてご返信いただけますと幸いです。
貴社サイトのリンク掲載をさせていただきます。恐れ入りますが、お客様対応の都合上、お電話ではなくメールにてご連絡いただけますようお願い申し上げます。
担当:山田
URL:https://example-a.jp/
Email:backlink@example-a.jpもしお返事いただける際は当社管理番号を削除せずご返信願います。
管理番号:xxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxx
もう一つ、別のパターンもあります。
ご担当者様
突然のご連絡失礼いたします。株式会社Bの藤田と申します。かねてより貴社のサイトを拝見しておりました。細部まで丁寧に作り込まれたコンテンツ発信に、いつも深い感銘を受けております。
この度は、良質な情報を発信されている貴社と、ぜひ相互にリンクを設置させていただければと思いご連絡いたしました。
もちろん費用はいただきません。共通の専門性を持つサイト同士でリンクを結ぶことで、検索エンジンからの評価向上や、より多くの方に貴社の魅力を知っていただく機会になれば幸いです。
お忙しいところ恐れ入りますが、もしご興味をお持ちいただけましたら、貴社のリンク掲載をさせていただきますので、簡単なご返信をいただけますと幸いです。
なお、当店は一般のお客様からのご予約やお問い合わせの電話が多く、大変恐縮ですが、ご連絡はメールにていただけますようお願い申し上げます。連絡先:backlink@example-b.jp
弊社サイト:https://example-b.jp/
よくある質問:https://example-b.jp/faqもしお返事いただける際は当社管理番号を削除せずご返信願います。
管理番号:xxxxxxxx-xxxx-xxxx-xxxx-xxxxxxxxxxxx
文章としては、どちらも丁寧です。敬語も整っていますし、失礼な言葉が入っているわけでもありません。
ただ、問題はそこではありません。
「これ、絶対にうちのサイトを読んでいないだろ・・・」
受け取る側には、そう見えてしまうのです。
「貴サイト」は便利。便利すぎて、何も見ていないのがバレる。
「貴サイト」「貴社サイト」「丁寧な情報発信」「有益なコンテンツ」。
このあたりの言葉は、営業メールを書く側からすると非常に便利です。なぜなら、どのサイトにも使えるからです。
AI探検隊にも使えます。司法書士事務所にも使えます。リフォーム会社にも、質屋にも、整体院にも使えます。
つまり、何も見ていなくても使える言葉です。
そして、何も見ていなくても使える言葉は、受け取った側にもそれなりに伝わります。
「これはテンプレートを大量送信しているな」と思われるわけです。
もちろん、テンプレートを使うこと自体は悪くありません。営業メールを毎回ゼロから書いていたら、それこそ非効率です。
ただ、テンプレートを使うなら、せめて相手サイトを見た形跡くらいは入れてほしいところです。
業者さんへ
そこをサボるなら、「いつも参考にしています」は少し欲張りです。
今はAIで、もう少し相手を見た文章にできる
今はAIの時代です。
URLが分かっているなら、サイト名、トップページのタイトル、主なテーマ、記事ジャンル、運営会社名、サービス内容くらいは確認できます。
もちろん、何でもAIに丸投げすればよいという話ではありません。
AIは普通に間違えます。会社名を取り違えることもありますし、古い情報を拾うこともあります。
存在しない特徴を、それらしく書いてしまうこともあります。いわゆるハルシネーションです。
だから最後は人間が確認する必要があります。
それでも、「貴サイトの丁寧な情報発信」で大量送信するよりは、かなりマシです。
OpenAIのAPIでも、Web検索ツールを使ってモデルがインターネット上の最新情報にアクセスし、出典付きで回答する仕組みがあります。つまり、技術的には相手サイトの情報確認と文面作成を組み合わせることは十分に現実的です。
たとえば、AI探検隊に相互リンクの依頼を送るなら、最低でもこのくらいにはできます。
株式会社〇〇でWeb担当をしております、岡田と申します。
AI探検隊様のサイトを拝見しました。
ChatGPTや生成AIの活用について、単なるツール紹介ではなく、実際に試した結果や失敗した点まで共有されている点が印象的でした。特に、中小事業者や士業がAIを業務に取り入れる際に、便利な点だけでなく、情報漏洩や誤回答などの注意点まで整理されているため、AI活用を検討している読者にとって参考になる内容が多いと感じました。
もしご負担でなければ、弊サイトとの相互リンクをご検討いただけませんでしょうか。
ただし、検索順位だけを目的としたリンクではなく、読者にとって関連性がある場合に限り、ご判断いただければ幸いです。ご興味がありましたら、メールにてご返信ください。
これでも営業メールであることに変わりはありません。
ただ、少なくとも「どこを見たのか」は伝わります。
相手サイトの内容を見たうえで依頼しているのか、それとも単にテンプレートを流しているのか。その差は、受け取る側にはかなり大きいです。
技術的には、相手サイトの確認はかなり自動化が可能
技術的には、営業先リストのURLからサイト情報を取得し、AIで要約して、相手に合わせた文面を作ることは可能です。
流れとしては、そこまで複雑ではありません。
まず営業先URLのリストを用意し、各サイトのタイトル、見出し、会社概要、サービス内容を取得します。
そのうえで、AIにサイト内容を要約させ、自社サイトとの関連性を判定させます。
関連性が低いサイトは送信対象から外し、関連性があるサイトだけ個別文面を作ります。
そして、最後に人間が内容を確認してから送信します。
この程度の流れであれば、APIやスクレイピング、Web検索、スプレッドシートなどを組み合わせて作ることはできます。
業者さんへ。
今どき、「貴サイト」だけで突撃する必要はありません。
せめて、サイト名くらい呼んでください。
せめて、何を読んだのかくらい書いてください。
せめて、「何に感銘を受けたのか」くらい言ってください。
「細部まで丁寧に作り込まれたコンテンツ発信に、いつも深い感銘を受けております」という便利すぎる褒め言葉は、逆に何も褒めていません。
ただし、スクレイピングは雑にやると別の事故になります
ここは重要です。
「AIで自動化できます」と言うと、すぐに何でもかんでもスクレイピングして、大量に営業メールを送ろうとする人が出ます。
それはただの雑な営業の高速化で、迷惑メール製造機です。
AIの使い方として、あまり美しくありません。
スクレイピングや自動取得をするなら、相手サイトの利用規約、robots.txt、アクセス頻度、取得する情報の範囲を確認する必要があります。
個人情報を取得していないか、Google検索結果などを無断で自動取得していないか、送信停止依頼に対応できるかも確認が必要です。
Googleは、検索順位の確認などを目的とした自動クエリ送信について、機械生成トラフィックとしてスパムポリシー違反に当たると説明しています。
つまり、「技術的にできる」と「やってよい」は別です。
この区別をつけないと、AI活用ではなく、単なる事故の量産になります。
相互リンクは、SEO目的を前に出しすぎると危ない
相互リンク営業メールで特に気になるのが、「検索エンジンからの評価向上」という一文です。
気持ちは分かります。
リンクがSEO上の評価に関係するという認識があるから、相互リンクの営業をしているのでしょう。ただ、SEO目的を前面に出しすぎるのは危険です。
Googleは、検索ランキングを操作する目的でリンクを作る行為をリンクスパムとしています。さらに、過剰な相互リンクや、相互リンクだけを目的にしたパートナーページもリンクスパムの例として挙げています。
業者さんへ。
「検索エンジンからの評価向上」と堂々と書くなら、せめてGoogleのリンクスパムポリシーくらいは見ておいた方がいい。
相互リンク自体が全部ダメ、という話ではありません。
読者にとって自然な紹介リンクなら、意味はあります。
問題は、「SEOに効くから相互リンクしましょう」という雑な誘い方です。
リンクは検索順位のためだけにあるものではありません。本来は、読者が次に読むべき情報へ移動するためのものです。そこを忘れると、サイト運営ではなくリンク工作になります。
AIを使うなら、大量送信ではなく「送らない判断」に使った方がいい
ここが一番大事です。
AIを使えば、営業メールを大量に作れます。
しかし、それは悪手です。
雑なテンプレ営業が、雑なAI営業に進化するだけです。
AIを、「送らない判断」に使うべきです。
このサイトは自社サイトと関連性があるのか。
相手の読者にとって意味があるのか。
リンク先として信頼できるのか。
相手に送って失礼ではないのか。
SEO目的だけに見えないのか。
こうした確認をAIで補助する方が、営業としてはよほどまともです。
「AIで1000通送れるようになりました」ではありません。
「AIで900通送らなくて済みました」の方が、よほど価値があります。
AIの使い方としても、その方が健全です。
「営業ではありません」みたいな顔をしない
相互リンク依頼は営業です。
リンクを設置してほしい。
返信してほしい。
相手に何らかの作業をしてほしい。
これは営業です。
営業であること自体は悪くありません。むしろ、営業なら営業として書いた方が誠実です。
突然のご連絡失礼いたします。
相互リンクのご相談でご連絡しました。
貴サイトの内容を確認したところ、弊サイトの読者にも関連性がある可能性があると考えました。
ただし、掲載可否は貴サイトの方針に沿ってご判断ください。
この方が、まだ読みやすいです。
変に「いつも参考にしています」と盛るから、文章が薄くなります。
見ていないなら、見ていないなりの書き方があります。
見たなら、どこを見たのか書けばいいだけです。
AI時代には、雑なテンプレートほど目立つ
以前なら、相手サイトごとに営業メールを個別化するのは手間でした。
しかし、今は違います。
AIを使えば、相手サイトの概要を整理し、関連性を確認し、文面のたたき台を作るところまではかなり楽になっています。
だからこそ、雑なテンプレートが前より目立ちます。
「貴サイトの丁寧な情報発信を、いつも参考にしております」
その一文を見た瞬間に、受け取る側は思います。
いや、読んでないでしょ。
業者さんへ。
相互リンク営業メールこそ、AIを使った方がいい。
ただし、迷惑メールを増やすためではありません。
相手をちゃんと見るために使うべきです。
送るべきではない相手に送らないために使うべきです。
嘘っぽい褒め言葉を減らすために使うべきです。
検索順位のためだけの相互リンクではなく、読者に意味のあるリンクかどうかを判断するために使うべきです。
AIの時代に、「貴サイト」だけで押し切るのは、さすがに少し雑です。
テンプレートを使うな、とは言いません。
ただ、せめてAIくらい使いましょう。
そして、AIを使うなら、手抜きのためではなく、雑さを減らすために使いましょう。
この記事は頑張って作ったHPに来た問い合わせにイラっとしてしまった、AI探検隊隊長が作成しました。